学童保育と放課後児童クラブ運営指針についての深い理解を求めている方に、この記事は貴重な情報源となることでしょう。
子どもたちの成長を支えるためには、運営指針の理解が不可欠です。
本記事では、学童保育の基本的な役割や指導員の重要性、そして放課後児童クラブ運営指針について、豊富な知識をもつHitodeさんへのインタビューを通じて掘り下げています。
運営指針が保育の質をどのように高め、子どもたちの成長にどう貢献しているかを詳しく解説していきます。
あわせて、学童保育のあり方と、それを実現するための具体的な指針を提供しますので、学童保育に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
- 学童保育の基本役割は子どもたちの「時間・空間・仲間(三間)」の確保
- 学童保育は子どもの主体的活動を支援し、「自ら育つ力」を引き出す
- 社会の変化(共働き増加、リモートワーク)により、学童保育の重要性が増加
- 「放課後児童クラブ運営指針」は学童保育の質を均一化し、指導員の役割を明確化
はじめに:Hitodeさんの経歴を紹介
ーー インタビューに先駆けて、Hitodeさんの経歴を伺ってもよろしいでしょうか?
承知いたしました
20代
- 大学(工学部)を卒業する
- 電気機器メーカー系の企業に入社し、エンジニアとして従事する
30代
- 子ども達への教育に意識が向く
- 通信制大学で初等教職課程を学ぶ
- 教職課程を学ぶ途中で、自分がやりたい事(子ども達の生活に関わること)と、教職を比べたときに違和感があることに気づく
- 答えが見つからず、また業務多忙で退職するタイミングではなく、会社員を続ける
40代
- あらためて「子ども達に関わる仕事に従事したい」と強く思う
- 子ども達の生活に関わることのできる「学童保育」で働くことを決意
- 学童保育(NPO法人が運営・公設民営)に転職
- 同じ法人内の学童保育、数ヶ所の異動を経験
- 規模は40~150名まで様々
50代
- 企業が運営する学童保育(公設民営)に転職
- 放課後児童支援員として、子どもたちの保育に従事する日々をおくる
現在にいたる
Hitodeさん、経歴をありがとうございます。エンジニアからの転職、異動経験や学童の規模など、聞きたいことがいっぱいです
学童保育の基本的な役割と、指導員の役割
まず最初に、学童保育の基本的な役割と、学童で働く指導員の役割についておたずねしました。
- 学童保育の基本的な役割は「三間の確保」
- 子どもが成長していくために、放課後には「三間」と「遊び」が必要
- 指導員の役割は「子ども達が主体的に活動できるように」支援する
学童保育の基本的な役割は「三間の確保」
ーー まず、学童保育の基本的な役割から教えてください。学童保育が果たすべき最も重要な役割は何だと思いますか?
子ども達の時間・空間・仲間の「三間」を確保することだと思います。仲間には、職員も含むと考えます。
「三間」とは?
時間・空間・仲間を総称する造語。子供たちが遊ぶ時間や場所が失われ、友達が少なくなったことを「三間がない」という。
出典:goo辞書
ーー 現代社会を生きる子どもたちには、三間がない(1.時間がない 2.空間がない 3.仲間がいない)と言われますね。「三間の確保」が重要な理由を教えてください。
Hitode:
そうですね。例えばイメージとして、子ども達には人間として生まれもった基本プログラム「自ら育つ力」があると考えます。
自分が置かれた環境にそって、そのプログラムを拡張する為のパッチみたいなものかな…と思います。
逆に分かりにくい「例え」になってしまいましたかね・・・(汗)
子ども時代には、人間として成長する為に、
- 自分のペースで
- 環境や他人から様々な刺激を受ける
このような体験が必要ではないか、と思います。
その為には
「三間」が必要不可欠だ
と、思っています。
子どもが成長していくために、放課後には「三間」と「遊び」が必要
子ども達が生まれながらに持つ「自ら育つ力」
これをより引き出すために「三間(空間・時間・仲間)」が必要ということですね。
ーー 三間が整っていないと、環境や他人からの刺激が足りず、「自ら育つ力」が引き出しづらい、という認識で大丈夫でしょうか?
そうですね。そういうことになります。
Hitode:
「自ら育つ力」は、人間が人間社会で生きる為に、基本的に備えている力です。
さらに成長して様々な能力を獲得していく為には、子ども時代の三間が大切だと考えます。
「自ら育つ力」と「さらなる成長」
これらを結びつけるのが「遊び」です。
ーー 放課後には「三間」と「遊び」の保障が、求められるということですね。
おっしゃるとおりです。
放課後には「三間」と「遊び」の保障が求められます。
子ども時代の「三間」と「遊び」の有無が、その後の能力の獲得や成長に関わってくる。
指導員の役割は「子ども達が主体的に活動できるように」支援する
ーー 学童保育の指導員として、日々の保育で最も重視していることを1つ挙げるとしたら、何でしょうか?
子ども達が主体的に活動出来るようにすることです。
Hitode:
その理由は「放課後」でさえも管理しようとする大人が多いからです。
子ども達が自ら育つ力を発揮するためには、「放課後」は子ども達が主体的に活動をする必要があります。
ーー 子ども達が主体的に活動するために、指導員は例えばどのような支援をするのが良いでしょうか? Hitodeさんのエピソードを交えて教えていただけますか?
これは多岐にわたるので具体的にエピソードを絞り込むのは難しいですね・・・(汗)
Hitode:
基本、子ども達は好奇心とチャレンジの塊だと思っています。
大人が萎縮するような言動をしなければ、主体的に活動するのが子どもです。
初めての遊びや慣れてない遊びなどでは
見てるから大丈夫だよ
失敗してもいいから
このような、子ども達が安心するような声かけをします。
遊びの中で子ども達がトラブって言い合いになった場合でも最初から介入せず、自分達で解決策を考えてもらいます。
ルールをわざと破って、わがままをしたら注意しますけど。
子ども達が安心するような声かけをベースにして、ルールをわざと破ったときには注意する。
このようなスタンスで支援することが、子ども達の主体性を守るのですね。
令和時代における学童保育の重要性
続きまして、令和時代における学童保育の重要性についてインタビューさせていただきます。
- 現代社会における学童保育の重要性
- 社会の変化が学童保育に与える影響
現代社会における学童保育の重要性
ーー 現代社会(令和5年時点)において、学童保育の重要性は増していると感じますか?
学童保育の重要性は増していると感じます
その理由は、
- 社会のニーズがある
- 子どもたちを観ていると、学童保育は重要
このように感じるためです。
学童保育は社会のニーズがある
Hitode:
- 家庭の事情などで、共働き世帯・ひとり親世帯が増えてきた社会状況
- 労働生産人口の確保のために、共働きを推進する施策
これら2つが合わさって
子ども達を預けたい
子ども達の安全・安心の確保
このような社会のニーズがあります。
子どもたちを観ていると、学童保育は重要な場所
子ども達を観ていても、学童保育の重要性が増していると感じます
子ども達を観ていると、
- 連続性をもった生活に、大人が関わって、喜怒哀楽を共有することは重要
- 「子ども集団」のある場所は重要
こんな風に感じます。
① 連続性をもった生活に大人が関わって、喜怒哀楽を共有することは重要
何となくは分かるのですが、でも、どうして重要なんですか・・・?
結論:子ども達の安心や自信につながるからです
Hitode:
「連続性をもった生活に大人が関わって、喜怒哀楽を共有することは重要」
上記について、経験から感じたことをお伝えしますね。
このような状況を「連続性をもった生活」として捉えます。
支援員(学童の大人)は子ども達一人ひとりと生活を共にしている中で、
- 子ども達の成長に気づける
- 子ども達の感情(喜怒哀楽)に寄りそって関われる
上記のような立場にあります。
成長に気づいたり、感情に寄りそう関係を継続していくと、子ども達が、
この人は自分に関心を持っている大人だ
悪い人ではなさそうだ
と感じてくれるようになるんです。
そうすると子ども達は、
どうやったらいいの?
どうしよう?
こんなふうに「素の自分」を出して相談にきたり、やってみた結果を伝えにきてくれるようになります。
このような「やりとり」を出来る大人がいることが、子ども達にとっては安心や自信につながっているように思います。
支援員が子どもたちの生活(連続性をもった生活)に関わって、喜怒哀楽を共有
▶子ども達の安心や自信につながっている
保護者に伝えることも大切な役割
Hitode:
また、子ども達の日々の小さな成長なども含めて、保護者の方々にお伝えできるということ
これも非常に大切なことです。
放課後に、子ども達と連続性のある生活を共にしている支援員にしか出来ない役割だと思います。
②「子ども集団」のある場所は重要
「子ども集団」って、どうして重要なのでしょうか・・・?
特に「社会性を身につける場」として重要です。
Hitode:
子ども集団の重要性について、これも経験から感じたことをお伝えしますね。
「子ども集団」は、子ども達が様々な情報や技などを共有する場です。
その中でも社会性を身につける場としては、なくてはならない場所だと感じています。
子ども達は、とても自己中心的です。
幼ければ幼いほどその傾向は強く、発達を考えれば当たり前のことですね。
その自己中心性の衝突が「子ども集団」では頻繁にあります。
例えば、
- 玩具の取り合い
- 友だちの取り合い
- ルールの解釈の違い
- 勝ち負けのこだわり…
こうしたことでケンカになります。
様々な場面で、
ワガママは駄目だよ
相手の話を聴いて
話し合って決めたら
等など、子ども達に関わる様々な立場の色んな大人が、何度も何度も助言しているはず・・・
しかし、大人の助言だけでは、
嫌だ!
となることも少なくないような・・・
トラブルの当事者である子ども達が納得する1番のタイミングは、
「子ども集団」の中にいる時
このように感じています。
自己中心性の衝突で、言い合いになり、ケンカになって誰か泣いてしまったり、遊びの雰囲気がシラけて嫌な思いをする、つまらなくなる。
その経験が一番の教訓になるようで、成長過程に必要です。
子ども達は、子ども集団のなかで「個」と「公」を体得しているようにも感じます。
学童保育は、異年齢混在で、多様性のある場所
数人~何十人という子ども達の中で、一緒に過ごす仲間を自分で探し、集め、遊ぶ…トラブルになれば解決策も複雑になります。
例えば、豊富な経験から高学年が上手に仲裁をして、それを見て真似る下級生…
このような場面も見受けられます。
「子ども集団」は、特に社会性を身につける場としてとても重要です。
- 子ども達は、自己中心的(それが自然)
- 自己中心性が衝突して、言い合いになったり、ケンカになる
- 嫌な思い、つまらない思いをする
- その経験が教訓になって、社会性が身につく
- 「子ども集団」がある学童保育は重要
社会の変化が学童保育に与える影響
ーー 社会の変化(少子高齢化、共働き家庭の増加、リモートワークの増加など)は、学童保育にどのような影響を与えていると考えますか?
Hitode:
学童保育は、
- 地域の保育園
- 大学生の社会活動
- 当事者である保護者
このような方々による「近隣地域での小さな活動」としてスタートし、多様な形で派生していったと認識しています。
まだまだ利用者も少ない時代における、個々の地域ニーズ密着型であったのではないかと思います。
そんな状況が長く続きましたが、その後の社会変化によって学童保育のニーズは急速拡大
関係者の働きかけもあって、国が関わる事業(放課後児童健全育成事業)にもなったわけです。
個々の地域ニーズ密着型ではなく、全国的に標準化が求められる「運営指針」まで策定されています。
しかし、そんな社会変化による変遷は子ども達にはまったく関係なく、昔も今も子ども達の本質は変わっていません。
地域ニーズ密着型であろうと、国の事業であろうと、
保護者でも教員でもない「ななめの関係にある大人」が率先垂範して、子ども達の「三間」と放課後の「連続性のある生活」を保障していかなくてはならないと思います。
そして「居たい。行きたい。やってみたい。」を目指す、多様な「こどもの居場所」のなかの一つとして、子ども達から選んでもらえる場所になることが「こどもまんなか社会」にて求められていると思います。
こどもまんなか社会とは?
〇常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えて(「こどもまんなか社会」)、こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押し。
出典:厚生労働省『こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント』PDF資料
〇そのための新たな司令塔として、こども家庭庁を創設。
「放課後児童クラブ運営指針」とは何か
続いて、「放課後児童クラブ運営指針」について伺っていきます。
- 放課後児童クラブ運営指針の内容
- 運営指針が学童保育に与える影響
- 【書籍の紹介】運営指針を学びたい人向け
- 運営指針を理解する研修の紹介
- 放課後児童支援員は、運営指針を理解して保育できているのか
- 運営指針を大切にしている先輩指導員のSNSを紹介
- 放課後児童クラブ運営指針の遵守が「子どもの最善の利益」につながる
放課後児童クラブ運営指針の内容
ーー 「放課後児童クラブ運営指針」の内容を簡潔に教えていただけますでしょうか?
Hitode:運営指針の内容を簡潔にいうと、多様な学童保育があるなかで
- 「放課後児童健全育成事業」としての学童保育とは何か
- 学童指導員(放課後児童支援員)とは何か
- 学童指導員(放課後児童支援員)とは、どうあるべきか
これらを明文化したものです。
運営指針が学童保育に与える影響
ーー この指針が学童保育にどのような影響を与えていると思いますか?
Hitode:
運営指針があると、学童保育の
- 設置主体
- 運営主体
- 現場の指導員
- 保護者の方々
このような学童に関わる人々が、同じ価値観で学童保育について考えられます。
運営指針から外れたら学童保育(放課後児童クラブ)とは似て非なるものになってしまうので、いずれの立場であっても運営指針を理解することは重要です。
【書籍の紹介】運営指針を学びたい人向け
ーー 運営指針を理解するための、おすすめの書籍や研修はありますか?
Hitode:
運営指針には解説書もあるので内容自体を理解するのは難しくないと思います。
書かれている内容について
とても大切な事だなぁ
このように、思える気持ちが必要です。
そういう意味でおすすめと言うか、僕が読んだ書籍のなかでお気に入りなのは次の4冊です。
- 「入門ガイド 学童保育指導員」大月書店
- 「どの子も笑顔で居られるために」高文研
- 「子どもの権利条約を学童保育に活かす」高文研
- 「学童保育に作業療法士がやって来た」高文研
どれから読むのが良いかな・・・?
新人さんや支援員になることを検討している方に1冊だけ紹介させて頂くとしたら、「入門ガイド 学童保育指導員」です。
少し前に書かれた本なので現状と多少異なる部分がありますが、学童保育について色々と網羅して書かれています。
運営指針を理解する研修の紹介
Hitode:
「運営指針」を理解する研修は、
- 放課後児童支援員認定資格研修
- 資質向上研修
上記があります。
どちらも自治体が実施している研修です。
放課後児童支援員認定資格は、所持しておくと学童で採用されやすかったり、待遇が上がる資格です。次の記事にまとめています。
日本学童保育学会の研究大会も励みになりました。
一度うかがったのですが育成現場の雰囲気と学術的探求が感じられる内容は「運営指針」に通じる知見を深めることが出来ました。
放課後児童支援員は、運営指針を理解して保育できているのか
−− 放課後児童支援員の資格を持っている指導員は、運営指針を理解し、指針を遵守した保育ができていると感じますか?
「できてます!」と言いたいところですが、できていることも、できていないこともあるのではないでしょうか、自戒を含めまして…😅
だから、職場の仲間同士の日々の振り返りや指摘が出来る雰囲気は大切です。
運営主体独自の方法論やこだわりではなく、勤務する職場(運営主体)に、「運営指針の遵守」を主軸とした話し合いが出来る環境があることが重要
運営指針を大切にしている学童かどうかって、就職(転職)する前に分かるのかな?
運営指針を読んだうえで、実際に現場を見学させてもらうのが一番よいと思います。
その学童保育のルールや、職員の見守り姿勢や声かけなどを実際に見ることが重要です。
運営指針を大切にしている先輩指導員のSNSを紹介
あと、いおぴいまんさんや、がってん所長さんや、なべさん等々、先輩の方々が「運営指針」を大切にされている気持ちが伝わるSNS発信されています。
この発信は指針を遵守した保育(育成)を心がける支援員を増やしていると思います。
僕も影響を受けている一人です。
先輩方にインタビューしました
放課後児童クラブ運営指針の遵守が「子どもの最善の利益」につながる
ーー 指針の遵守が学童保育の質に、どのように影響すると考えますか?
利用する子ども達にとっての「最善の利益」に結びつくでしょう。
運営指針は「子どもの最善の利益」を考慮して作られているためです。
「子どもの最善の利益」とは?
子どもの最善の利益(こどものさいぜんのりえき)または最善の利益は、子どもの福祉に関する広い範囲の問題を決定するために、ほとんどの裁判所が準拠する原則である。国際人権条約の一つである「児童の権利に関する条約」に於いて基本原則として掲げられて以降、障害のある人の権利条約やジョグジャカルタ原則に於いても採用されている。
出典:ウィキペディア
すべての設置主体・運営主体・職員・保護者の方々が「運営指針」を理解すれば、学童保育で「運営指針の遵守」が維持・継続されるようになるはずです。
子どもたちのために、私も「運営指針」を学ぼうっと
子どもたちの視点:学童保育で何を求めているのか
ここからは「子どもたちの視点:学童保育で何を求めているのか」というテーマに入らせていただきます。
- 子どもたちの声を聴くことの重要性
- 子どもたちが学童保育に求めるもの
子どもたちの声を聴くことの重要性
ーー 子どもたちからの声を聴くことは、学童保育にどのような影響を与えますか?
Hitode:
「放課後児童クラブ運営指針」には、子どもの意見を聴くように書いてあります。
放課後児童クラブは「こどもの居場所」ですから、子どもの意見表明は必須です。
大人の都合や自己満足で子ども達を管理することにならないようにする為でもありますし、子ども達が自主的な「意見表明」を練習する機会にもなると思います。
そして、支援員は子ども達の様々な声から「支援とは何か」を学び、支援員として成長させてもらっています。
ーー 子どもたちの声をどのようにして聴けば良いでしょうか?
「どのようにして聴くか」は大事ですが、根本的に「どのように気持ちをキャッチするか」という意識が必要だと思うのです。
Hitode:
もちろん子どもたちの声は「聴く」のですが、気持ちをうまく言葉にできない子もいます。
そのため、支援員は意見待ちの姿勢ではいけません。
気持ちをキャッチするには日々の「見守り」が大切
常にアンテナを張って気持ちをキャッチすることが望ましいでしょう。
具体的にどうやって子どもたちの気持ちをキャッチすれば良いのかな・・・?
Hitode:私が心がけているのは、次の5点です。
- 子ども達を日々観察する
- 声かけをする
- 話を聴く
- 一緒に遊ぶ時間をもつ
- 喜怒哀楽を共有する
このようなことを続けることで、その子の表情や態度や言葉から、気持ちを推測できるようになってくるでしょう。
長く一緒に過ごせば、気持ちを推測する精度も上がります。
僕の気持ちをわかってもらえてる
このような状態になると、子ども達は支援員に対して素直に意思表示や意見表明をしてくれるようになりますよ。
子どもの気持ちをキャッチするに際して、キャッチする側であり支援員である自分が中心にならないように意識しています。
その意識を学ばせてもらった本があります。
きしもと たかひろさんの著書である『怒りたくて怒ってるわけちゃうのになぁ』という本です。
本当に素敵な本だと思います。
ーー 子どもたちの気持ちや声を、どのように保育に反映していけば良いでしょうか?
Hitode:どのように保育(育成)に反映するかに関しては、
- 目の前の子ども達
- 勤務する職場
これらによって、対応の仕方は千差万別です。
しかしどの学童でも、
「子どもの最善の利益」と「自分のわがままで他者の権利を強引に奪ってはいけない」
上記の考え方は、前提にあった方が良いでしょう。「公」と「個」の学びにも繋がります。
子どもたちが学童保育に求めるもの
ーー 学童保育における子どもたちのニーズは何だと思いますか?一人ひとり様々だと思いますが、よくあるものを3つほど教えていただけますか?
Hitode:これまで関わった複数の学童保育で共通して、必ず子ども達(全学年)から聴こえてくることをあげるとしたら、次の3つです。
- 自由が欲しい
- 学童なくなればいい
- 新しいおもちゃ(遊び)が欲しい
残念ながら学童保育や支援員に対するダメ出しですね😅
子ども達は、下校と同時に家へ帰っていく友だちを見ながら、自分の意に反して学童保育へ通う日もありますね。
そして学童保育へ着いたら、
それはダメ
静かにして
時間を守って
といった感じで指導員から指示(注意)を受け、おもちゃも遊びなれて飽きてしまったものばかり。
思い通りにさせて欲しい!!
子ども達が「①自由がほしい」「②学童なくなればいい」「③新しいおもちゃ(遊び)がほしい」と訴えてくることがあっても当然の流れだと思います。
ーー 子どもたちの訴えに応えるために、どのようなアプローチを取るのが良いでしょうか?
「良いアプローチはこれです!」という唯一の回答は分からないのですが、まずは子どもから話を聴きます。
どうしたらその子が思うような状況になるか、一緒に考えます。
そして、
- 気持ちが上向くように遊びをいくつか提案する
- 三間(時間・空間・仲間)を提供する
日々、この繰り返しです。
もちろん楽しく愉快に過ごすことも日常的に沢山ありますが、そんな時は子ども達は何も求めてこないようです。
子ども達が落ち込んでいるときに、指導員がいかに寄り添うことができるか
これができないと、子ども達は困りごとさえ言いにきてくれないようです。
大人側の関心事と、子どもたちの関心事のギャップ
ここからは、大人側の関心事と、子どもたちの関心事のギャップについて、伺っていきます。
- 大人の関心事:待機児童問題と待遇の現状
- 「大人の関心事」と「子どもたちに必要なもの」のギャップ
- ギャップを埋めるために、まずは運営指針を知ってもらう
大人の関心事:待機児童問題と待遇の現状
ーー 大人の関心事の1つに待機児童の問題があります。働く保護者からすると「学童に入りたくても入れない問題」がありますが、待機児童問題についてどのように感じていますか?
Hitode:学童保育の利用申請をしたのに利用承認にならず待機児童となった場合、「他に同じような選択肢がほとんどないこと」は非常に問題です。
学童保育だけに関して言えば、同じ地域に複数の公設学童や民設学童があって「選択できる状況が理想」だと思いますし、首都圏で散見される「大規模化」や「詰め込み」は大きな問題だと思います。
学童保育以外にも多様な「こどもの居場所」があることが望ましいと思います。
ーー 大人の関心事のもう1つは待遇についてです。特に学童保育で働く指導員にとって、待遇は大きな関心事です。他の業界に比べて100万円くらい年収が低いと言われていますが、この低待遇が学童保育にどのような影響を与えていると思いますか?
学童保育は「質の向上」が求められていますが、もしかしたら「プロフェッショナルな人財が育ちにくい職業」になってしまっているかもしれません。
待遇に関して「恵まれている」と言える就労先は、他の職業と比較しても少ないのではないでしょうか。
待遇では恵まれていないけれど、この仕事に従事したい!
このような志を持った少数派が集まってくるメリットがある反面、経済的理由のために長く働くことが出来なかったり、生活スタイルによっては不安定な状況になるというデメリットもあると思います。
待遇面が課題となって「放課後児童支援員」になるのを諦めたり辞めたりするのは残念です。
そして「放課後児童支援員」は「小遣い稼ぎ」の感覚で従事するような気軽な仕事ではありません。
資格や経験・能力に付与する様々な手当を設定し、努力している人は高待遇になるような仕組みがあったらよいのではないかと思います。
志のある人財が少数派であるかぎり、子どもの最善の利益になる「質の向上」は非常に高いハードルだと思います。
「大人の関心事」と「子どもたちに必要なもの」のギャップ
ーー 「大人側の学童に対する関心事」と「子どもたちが必要としているもの」との間に、ギャップは感じますか?
ギャップは感じます・・・
Hitode:大人側だけでも、立場や役割によってギャップがあります。
大人それぞれが、自分の立場や役割というフィルターを通して関心事を持ちます。
そのため、学童保育への関心事は「それぞれの大人の都合」によって不揃いになってしまっているように感じます。
一方で子ども達は、
- 自由に過ごしたい(自立の準備)
- 遊び
- 三間(時間・空間・仲間)
これらを、成長過程の欲求として必要としています。
ーー 「大人たちの関心事」と「子どもたちが必要としているもの」このギャップを埋めることはできるのでしょうか?
大人側の意識を子ども達に合わせることで、ギャップを減らしていけます!
Hitode:大人側の状況を考えると、学童保育は、
- 子どもを預ける場所
- 子ども達は未熟だから管理の徹底が必要
- 「預け先」での放課後の過ごし方についてまで、子ども優先に考える余裕がない
大人(設置主体・運営主体・保護者・地域社会)の中には、こういう考えをもっている方々もいるでしょう。
一方で、子ども達は成長過程において、極めて自然に
放課後は好きなことをやりたい
と思っているだけです。
「放課後」の時間まで厳しく管理され抑制されたら健全に成長出来るのか…
このように考えてしまいます。
大人社会が複雑で多忙で、子ども達を「ゆったりと観察」する時間・場所そして意識が薄くなってきています。
そういう意味でも「大規模化・詰め込み」は大問題😭
もともと「学童保育」は、子ども集団が主体的に「素の状態」で活動しているようすを、大人が「ゆったりと観察」できる雰囲気が漂う場所です。
観察をせずに、子ども達の健全な要求を理解することはできないですよ
大人側の意識を子ども達に合わせていくことで、「大人の関心事」と「子どもたちに必要なもの」のギャップを減らしていけると思います。
それが「こどもまんなか社会」での「こどもの居場所」である「学童保育」ではないでしょうか・・・?
大人全体が「子ども達が必要としているもの」を理解して寄り添う必要があります。
「子どもたちが必要としているもの」を理解するためには「運営指針」の周知が大切です。
ギャップを埋めるために、まずは運営指針を知ってもらう
ーー 実際に、学童に関わる大人たち(指導員・保護者・運営者…)が運営指針を理解するためには、どのようなアプローチが考えられるのでしょうか?
まずは運営指針の存在を知ってもらうことが重要ですね
Hitode:実際に学童保育で働いていて、「運営指針」に基づいた会話や育成活動が少ない印象です。SNSからも同様の印象を受けます。この状況を変えていく必要があるように思います。
具体的には
- 関係者が意識して「放課後児童クラブ運営指針」という単語を多発・多用する
- 運営主体の本部が「運営指針」ベースの職員会議や研修を徹底する
- 保護者の方々に対して、入所説明や育成報告の場で「運営指針」を引用する
- 子ども達にも、生活上のルールを説明をするときに「運営指針」があることを説明する
現状は、それぞれの法人の理念や目標、ルールの共有のみになっている学童が多いのではないでしょうか?
「こども家庭庁」や自治体も、「子どもの最善の利益」のために「運営指針」の遵守と周知に注力いただきたいです。
総括:子どもの居場所としての学童保育をどう実現するか
ーー ここまでの内容を踏まえて、「子どもの居場所としての学童保育」を実現するために、私たち学童保育の指導員はどのようなことをしていくのが良いのか、総括をお願いします。
Hitode:社会の中で子ども達側に立つ大人として、子ども達のアドボケイト(代弁者)であることが重要です。
ーー 最後に、働き始めたばかりの新人指導員さんや、これから学童保育で働こうと考えている方に向けて、一言メッセージをお願いします。
「遊びは子どもの主食です」
この言葉は、日本小児科医会からの言葉です。
学童保育で働くということは、遊びを保障することに携わるという素敵なことだと思います。
誰でも出来る簡単で気軽な仕事ではありません。
現場で、主役である子ども達に向けて大きくアンテナを張って関わると
人間ってスゴいなぁ・・・!
このように思える素晴らしいものが見えてくると思います。
そして「学童保育」に固執したり、他の「こどもの居場所」と競合したりせずに、状況によっては職場を変えたり協同したりすることで沢山のプラスが発生すると思います。
「子ども真ん中」で頑張っていきましょう!
この記事では、放課後児童クラブの運営指針と学童保育の基本的な役割について、Hitodeさんへのインタビューを通じてご紹介しました。
学童保育の基本的な役割は「三間(時間、空間、仲間)の確保」としています。これらは子どもが放課後に安心して遊び、学び、成長できる環境を提供するために必要不可欠です。
- 三間の確保
- 子どもたちが主体的に活動できるよう支援する指導員の役割
令和時代における学童保育の重要性は、社会の変化とともに高まっています。変化する社会の中で、放課後児童クラブ運営指針は学童保育に共通の指針を提供します。
- 現代社会における学童保育の重要性
- 社会の変化が学童保育に与える影響
- 放課後児童クラブ運営指針の内容と影響
運営指針を理解し、活用することは指導員にとっても重要です。そのために、運営指針を学ぶための研修や、指針を大切にしている先輩指導員のSNSの紹介などがあります。
- 運営指針を理解する研修
- 放課後児童支援員は運営指針を理解して保育できているか
- 運営指針を大切にしている先輩指導員のSNS紹介
子どもたちの視点から見ると、彼らが学童保育に何を求めているのかを理解することが重要です。また、大人側の関心事と子どもたちの関心事のギャップについても触れています。
- 子どもたちの声を聴くことの重要性
- 子どもたちが求めるもの
- 大人の関心事と子どもたちのギャップ
以上の内容から、学童保育を子どもの居場所としてどう実現するかを総括しました。学童保育の重要性を理解し、運営指針に基づいた質の高い保育を提供することが、子どもたちの最善の利益につながります。
あなたも学童保育に関わる一員として、運営指針を深く理解し、子どもたちの居場所作りに貢献してみませんか?
運営指針を学び、実際に保育現場で活かすことで、子どもたち一人ひとりの成長を支えることができるでしょう。
<プロフィール>
50代男性。大学卒業後、40代後半まで電気機器メーカーでエンジニアとして従事。「子どもたちの生活に関わることをしたい」と思い、学童保育に転職。現在は企業が運営する学童保育で指導員をしています。
- 放課後児童支援員
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